2025年12月1日に基礎看護学講座では「臨床推論・臨床判断演習」において、実践的な判断力を養うための特別講義と演習を実施しました。
■厚生労働省の指定規則改正と本学の取り組み
近年、医療の高度化・複雑化に伴い、保健医療専門職には、根拠に基づき迅速かつ適切に状況を把握し行動に移す「臨床判断(Clinical Judgment)」の能力が強く求められています。
こうした背景から、厚生労働省の指定規則が改正され、養成課程における重要な教育内容として「臨床判断」が正式に追加されました。
本学は、臨床判断を各科目内に位置づけるだけではなく、「臨床推論・臨床判断演習」を必修科目として設定しています。
■特別講師として本学卒業生を招聘
今回の特別講義では、本学の卒業生であり、診療看護師として病院でご活躍されている曹路地 重蔵さんをお迎えしました。
曹路地先生は、ご自身の豊富な臨床経験に基づき、患者さんの訴えや情報から病態を正確に推論し、適切な介入へとつなげるための「臨床推論」の重要性とその思考プロセスについて、具体的な事例を交えながらご講義くださいました。学生たちは、卒業後の自分たちの姿を重ね合わせ、真剣な眼差しで学びを深めていました。

■模擬患者さんとの実践的な演習
講義後には、臨床推論と臨床判断を実際に体験する演習を行いました。この演習では、模擬患者さん(SP:Simulated Patient)5名にご協力いただきました。
■演習を通して(演習の振り返りレポートより一部抜粋)
- 腹痛という症状の多様性
同じ「腹痛」でも痛みの性状や部位によって考えられる疾患が異なることを実感しました。疾患を絞るためには、痛みの特徴(部位・強さ・性質)や関連症状を正確に把握することが重要だと学びました。
- 情報収集のフレームワーク活用
SAMPLERやOPQRSTを使うことで、情報の不足を補い、疾患の可能性を整理できることを体験しました。
- フィジカルアセスメントの重要性と注意点
浅い触診で痛みがある場合、深い触診を行うのか判断することも大切だと学びました。また、患者の発言だけでなく、圧迫時の表情や反応など非言語的情報の観察も重要であると理解しました。
- 情報整理と報告のスキル
ISBARCを意識した報告により、必要な情報を簡潔に、正確に伝えることができると学びました。報告時には不要な情報を省き、構成を整える能力が求められることを実感しました。
5. 演習を通して感じたこと
- 患者の第一印象から重症度を感じ取ることの重要性を体験できた。
- 看護師は患者の最も身近な存在であり、状態把握と報告は看護師にとって非常に重要な役割であることを再認識した。


■模擬患者さんとの演習を振り返って(演習の振り返りレポートより一部抜粋)
- 優しい声掛けと必要情報の確実な取得の両立
強い痛みを訴える患者への問診では、優しく声をかけることが大切ですが、必要な情報は遠慮せずにしっかり聞くことが重要であると学びました。言葉遣いと内容のバランスを意識することで、患者の安心感を保ちながら情報収集ができると考えました。
2. 患者に分かりやすい説明の重要性
「聴診します」ではなく「お腹の音を聞きますね」、「触診します」ではなく「痛みのある部分に触れていきますね」など、専門用語を避け、理由を添えて説明することで患者の理解と安心につながることを学びました。
3.コミュニケーションは情報収集だけでなく信頼構築の手段
問診は単なる情報収集ではなく、患者との信頼関係を築く重要な場であると再認識しました。目線を合わせる、ゆっくり話す、声のトーンを調整するなど、基本的な配慮が患者の不安を軽減すると実感しました。
4.観察の重要性
バイタルサインの数値だけでなく、表情や姿勢、声のトーン、手汗などの細かな変化を観察することが、異常の早期発見につながると学びました。
- 模擬患者さんとの演習を通して感じたこと
- 紙面上の情報と実際の患者の印象は大きく異なるため、リアルな観察の重要性を実感した。
- 模擬患者からのフィードバックにより、患者に寄り添う姿勢の大切さを再認識した。

基礎看護学講座








