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地域貢献・国際交流

Social Contribution & International Exchange

国際貢献事業(JICA研修員の受け入れ)

JICA日系研修「高齢者福祉におけるケアシステムと人材育成」フォローアップ調査報告

本調査は、2007年から2015年まで9年間実施してきた南米の日系人を対象とした日系研修「高齢者福祉におけるケアシステムと人材育成」コースのフォローアップ調査として実施したものである。

1. 訪問先 パラグアイの概要

(1)正式名称 (和文)パラグアイ共和国
(英文)Republic of Paraguay
パラグアイ国旗(表面) (表面)
パラグアイ国旗(裏面) (裏面)
(2)政体 立憲共和制
(3)元首 オラシオ・カルテス大統領(任期は2018年8月まで)
(4)首都 アスンシオン
(5)面積 406,752平方km
(6)人口 7,012,433人(2015年)
(7)民族 先住民と欧州系の混血95%、先住民2%、欧州系2%、その他1%
(8)言語 公用語:スペイン語、グアラニー語
(9)宗教 カトリック
(10)略史 1536年スペイン人がアスンシオンに到着。1811年スペインから独立。1864~1870年対三国(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ)戦争で国土、人口の半分を失う。1932~1935年チャコ戦争でボリビアに勝利。1954年クーデターによりストロエスネル将軍が政権掌握。民主化後、赤党より3代の大統領が就任したが、2008年4月の総選挙で、野党連盟のルゴ(元司教)新政権が勝利、61年間の赤党政権が崩壊した。
(11)気候 熱帯性気候に属するが、西部は乾燥地帯で、東方へ向かうほど降水量が増して湿潤となる。季節は夏と冬に大別され、春と秋の期間は短い。

2. 日系移住の歴史と日系研修受け入れの経緯

パラグアイへの日本人の入植は1936年に始まり2016年には移住80周年の節目を迎える。こうした中パラグアイ日系人社会では移住者の高齢化が進み、高齢者福祉対策が急務となっているが、国や地方自治体による福祉政策は十分ではなく、高齢化社会に対する取り組みは日系人社会が自ら実施していかなくてはいけないのが現状である。
本研修は、高齢者の尊厳を支え、それぞれの地域において健康で自立した日常生活を維持・支援するためのデイケアと介護予防の知識と技術の実際について学び、その機能を各地域でシステム化することを目的として、2007年から今日まで、石川県立看護大学と羽咋市社会福祉協議会(以下、研修実施団体)が共同で研修を実施してきた。2015年の本邦研修終了時点でのパラグアイ研修員受入実績は累計23名である。
JICA北陸支部から、堀内好夫支部長を団長に研修先である石川県立看護大学と羽咋市社会福祉協議会からなる調査団8名を平成28年2月26日(金)から3月9日(水)までの13日間にわたり、本研修で23名と一番多く研修員の参加があったパラグアイ共和国に派遣された。

調査団員構成

役職 氏名(所属)
団長・総括 堀内 好夫(JICA北陸支部 支部長)
技術指導 川島 和代(石川県立看護大学 教授)
技術指導 中道 淳子(石川県立看護大学 講師)
技術指導 岩城 和男(羽咋市社会福祉協議会 会長)
技術指導 中元 美幸(羽咋市社会福祉協議会 介護福祉士)
業務調整 名村 欣哉(JICA北陸支部 担当職員)
現地取材 前口 憲幸(中日新聞北陸本社 記者)
取材調整 松柴 由佳(JICA北陸支部 専門嘱託)

宿泊ホテルから見た首都アスンシオン

イグアス移住地にある大規模大豆畑

エンカルナシオン市 川の向こうはアルゼンチン

どこまでも続く赤土の大地

調査日程と活動内容

月日 時間 活動内容 宿泊地
2/26 (金) 6:00→11:35 金沢駅発(かがやき500号)→羽田空港出発 機中
15:10→21:15 ロンドンヒースロー空港到着→出発
2/27 (土) 6:05→7:45 サンパウロ グアルーリョス空港到着→出発 アスンシオン
9:50 アスンシオン空港着
午後 日本人会連合会との意見交換
2/28 (日) 8:00-14:00 移動(アスンシオン→エンカルナシオン) エンカルナシオン
15:00-16:00 エンカルナシオン日本人会訪問
16:00-17:00 エンカルナシオン高齢者福祉ボランティア
JICAボランティアとの意見交換、聖マリア老人ホーム視察
2/29 (月) 8:00-9:00 移動(エンカルナシオン→ラパス) ピラポ
(ホームステイ)
9:00-10:00 ラパス日本人会との意見交換
10:00-11:00 ラパス高齢者福祉現状視察
ラパス移住地高齢者福祉ボランティアとの意見交換
13:00-14:00 移動(ラパス→ピラポ)
14:00-15:00 ピラポ移住地高齢者福祉現状視察
15:00-16:00 ピラポ日本人会との意見交換
ピラポ移住地高齢者福祉ボランティアとの意見交換
ピラポ市長への表敬訪問、日系人家庭ホームステイ体験
3/1 (火) 8:00-12:00 南部地域ワークショップ開催(対象:ピラポ、ラパス、エンカルナシオン)@ピラポ移住地 イグアス
13:30-17:30 移動(ピラポ→イグアス)
3/2 (水) 8:00-9:00 イグアス日本人会との意見交換 イグアス
9:00-10:00 イグアス高齢者福祉現状視察、イグアス高齢者福祉ボランティアとの意見交換
10:00-12:00 シウダデルエステ日本人会との意見交換
シウダデルエステ高齢者福祉ボランティアとの意見交換
13:00-17:00 東部地域ワークショップ開催(対象:イグアス、シウダデルエステ) @イグアス移住地 イグアス日系診療所の視察
3/3 (木) 8:00-10:00 イグアス移住地視察 アスンシオン
10:00-12:30 移動(イグアス→カアグアス)
14:00-15:00 カアグアス青年海外協力隊 看護隊員活動視察
15:00-18:00 移動(カアグアス→アスンシオン)
3/4 (金) 8:00-9:30 アスンシオン日本人会との意見交換 アスンシオン
10:00-11:30 アスンシオン高齢者福祉現状視察
アスンシオン高齢者福祉ボランティアとの意見交換
PM 国立アスンシオン大学附属看護学部視察、国立老人ホーム視察
3/5 (土) 8:00-12:00 アスンシオンワークショップ開催(対象:アスンシオン、ラ・コルメナ、アマンバイ)@アスンシオン アスンシオン
PM パラグアイ国会議事堂視察
3/6 (日) 終日 資料整理 アスンシオン
3/7 (月) 9:00 JICAパラグアイ事務所報告 機中
11:00 在パラグアイ日本国大使館報告
14:00 日本人会連合会報告
17:50 アスンシオン空港(JJ8141)出発
19:55→23:45 サンパウロ グアルーリョス空港到着→出発
3/8 (火) 15:05→18:55 パリ シャルルドゴール空港到着→出発 機中
3/9 (水) 14:55→18:58 羽田空港到着→金沢駅到着

3. 調査団の活動内容

本調査団は、アスンシオン、エンカルナシオン、ラパス、ピラポ、イグアスの各日系移住地を 訪問し、それぞれの日本人会とその中で高齢者支援のボランティア活動を行い帰国研修員が 活動しているグループを訪問し意見交換会や帰国研修員のアクション・プランの実施状況と課題等についてヒアリング調査を行った。
また、3ヶ所の日本人会(アスンシオン、ピラポ、イグアス)においてワークショップを開催し、まだ日系研修に参加していないボランティアを含め日本人会関係者向けに日系研修の実施状況や羽咋市社会福祉協議会の取り組みの紹介、高齢者の認知症の理解や地域で認知症を予防する取り組みに関する講義、体を動かしての認知症予防の運動方法について実技を交え紹介した。

ラパス移住地での高齢者福祉に関するヒアリング

エンカルナシオン・ラパス・ピラポ移住地におけるワークショップ

イグアス移住地でのワークショップ 認知症の講義

アスンシオン・アマンバイ移住地でのワークショップ レクリエーション実技

帰国研修員の移住地と研修年度

地区 研修員名(研修年度)
エンカルナシオン市 宮脇枝子(H19) 若森アナマリア(H20) 氏家水口マルガリータ(H27)
ラパス移住地 石川三枝子(H19) 北川美香(H20) 吉田由美(H22) 北川瞳(H24)
ピラポ移住地 越智マサ子(H19) 水本愛夏(H20) 篠藤春美(H23) 田口美恵子(H25) 三浦久美子(H25)
イグアス移住地 仙野良子(H19) 福井珠美(H20) 久保優子(H21) 西山由紀美(H26) 熊野恵子(H27)
アスンシオン市 合田歳恵(H21) 松橋南(H22) 山岡久江(H24) ナウパイ城間ジェニー(H26)
アマンバイ移住地 家久玲子(H22)、西村千秋(H24)

ワークショップの3箇所で実施したワークショップの参加者数は次の通りである。

ブロック別名 女性 男性
イタプア
・ラパス
・ピラポ
・エンカルナシオン
27 4 31
東部
・イグアス
・エステ
10 3 13
セントラル
・アスンシオン
・ラ・コルメナ
・アマンバイ
12 4 16
合計 49 11 60

帰国した研修員とは、5名を除き18名と面談することが出来た。特に研修期間中に作成した アクション・プランの実施状況を確認したところ、ほぼすべての帰国研修員が何らかの取り組みを行っていることが確認できた。各日本人会すべてにおいて高齢者福祉ボランティア達がディサービスを実施していた他、どこの会も継続して活動をしていること、そして帰国した研修員が辞めずに活動に従事していることは、高く評価したい。一方、課題としては、現場においていかに実効性のあるアクションに改良・改善していくかが重要であることも再確認できた。この点、JICAから  派遣されているボランティアとの情報共有を図りながら、アクション・プランのフォローをすることが有効と考えられる。
帰国した研修員のその後の積極的なボランティア活動への関わり方については、多くの日本人会関係者から高く評価されており、その行動変容は研修の大きな成果の一つであることが確認できた。

日系社会の人口と高齢化率

日系移住地 0-19歳 20-64歳 65歳以上 合計 平均年齢 高齢化率(%)
日系社会全体 1,097人 2,887人 897人 4,881人 40.6歳 18.3
アスンシオン 176人 656人 197人 1,029人 42.0歳 19.1
ラパス 151人 404人 110人 665人 39.4歳 16.5
ピラポ 309人 712人 211 1,232 39.0歳 17.1
チャベス 27 75 24 126 40.0歳 19.0
イグアス 200 466 140 806 38.8歳 17.3
エンカルナシオン 39 136 55 230 47.0歳 23.9
アマンバイ 73 203 86 362 43.9歳 23.7
ラ・コルメナ 69 129 47 245 38.1歳 19.1
シウダデルエステ 53 106 27 186 37.0歳 14.5

(注)「日系社会全体」は各日本人会・文化協会の会員データ2016年である。

(引用:パラグアイ日本人会連合会から提出された事前アンケートより)

一方、日本ほどではないが、パラグアイの高齢化が進む日本人会(高齢化率18.3%)の高齢者福祉事業を支えている人たちは、いずれもボランティアで行っている状況であり、自ずからその 活動の限界も感じている状況である。今後の日本人会会員の高齢化を考えた場合、早晩組織的な対応が求められるものと思われるが、当該日本人会幹部の高齢化に対する理解はまだ十分とは言えない状況である。このため、例えば現在毎年実施されている1ヶ月間の日系研修を日本人会幹部向けの2週間程度の視察型の研修を実施することで高齢化福祉に対する理解を深めてもらうことが有効であると思われる。このような短期視察型の研修の実施の可能性について、本部と検討することも一案である。
さらに、パラグアイにおける日系社会の高齢者福祉対策の質的向上の為、草の根技術協力 実施の可能性についても日本人会連合会をはじめパラグアイ事務所と協議を行った。この結果、今後の可能性として

  1. 系高齢者の健康課題に関する実態調査支援と
  2. 短期のリピーター(リーダー)研修員受け入れ
  3. 将来の高齢者福祉計画の策定支援

上記の3点が、活動内容として考えられる点を共有することができた。この考えに基づき、日本人会連合会内部で再度相談してもらうこととなった。
一連の調査や関係者との意見交換、ワークショップなどを通じ、本調査団はパラグアイにおける日系社会の高齢化の現状と課題を広く理解し、共有することが出来た他、本調査結果を踏まえ来年度以降の日系研修にフィードバックする事項を確認することができた。

4. パラグアイにおける高齢者福祉の現状と課題

パラグアイ日本人会連合会からの事前資料によると、パラグアイ共和国の全人口は2016年 1月1日現在、685万余であり、そのうち65歳以上の高齢者は41.3万人であった。高齢化率は6.0%、平均年齢28.3歳と若年層が多い国家である。
また、パラグアイは農業を基幹産業とし、世界有数の大豆生産量・輸出量を誇っている。しかし、同国の経済は、農作物の生産状況と国際価格に大きく左右されるため脆弱であり、中南米の中で経済発展が遅れている国の1つである。また同国は、世界的にも貧富の格差が大きい国でもある。パラグアイの「社会経済戦略計画(2008-2013)」および「社会開発のための公共政策(2010-2020)」は、格差のない全国民の生活向上を掲げ、特に貧困層への社会サービスの充実と生計向上を目指している。このような人口構造、経済的状況の中で、パラグアイ保健省は高齢者福祉対策として実施していることは、①貧困者で身寄りのない者を対象にした入居施設・通所施設の設置、②困窮者を対象にした年金支給である。

パラグアイ全土における高齢者福祉の課題として、以下のようなことが指摘されている。

  1. 年金制度が十分ではないため、生活困窮者になる高齢者が多い。
  2. 医療保障が十分ではないため、病気の治療に費用がかかり、生活費が圧迫される。公的な医療保険でも一定の負担があり、民間医療保険の場合は、手術・入院の場合に多額の負担がかかる。支払えないため、治療を受けないか、民間療法に頼る者も多い。
  3. 病気等で入院した時に、介護者の付き添いを求められるため、家族の負担が大きくなる。
  4. 若い国家ゆえ、健康づくりや介護予防に関する認識が低い。
  5. 介護の専門知識が十分に伝わっていないため、世話人や家族から適切な介護を受けられない。
  6. 在宅介護の支援体制がないため、家族の負担が大きい。
  7. 認知症等の専門医がいないため、適切な治療が受けられない。

日系研修を中心にすすめながらも、パラグアイ共和国の全土の高齢者福祉についても視野に入れながら、今後の支援を考えていく必要がある。

5. 視察先の紹介

1)日系移住地における診療所

日系移住地における診療所 日系移住地における診療所

2)パラグアイ共和国 国立アスンシオン大学附属看護学部

パラグアイ共和国 国立アスンシオン大学附属看護学部 パラグアイ共和国 国立アスンシオン大学附属看護学部

3)国立老人ホーム サンフランシスコ老人ホーム

今回のフォローアップ調査団のメンバーは、パラグアイの高齢者福祉対策の実際に知るために、高齢者福祉施設の視察をさせていただいた。カトリックの宗教団体が運営している老人ホームや警察が運営している国立老人ホームに伺うことができた。警察が関与しているのは、生活困窮者や身寄りのない高齢者が路上等で行き倒れた場合などの救済対策の施設として誕生したとのことであった。

国立老人ホーム サンフランシスコ老人ホームの玄関

国立老人ホーム サンフランシスコ老人ホームの施設内(居室)

居室前で過ごす高齢者

自分の身の上を語る高齢者

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