Graduate School
大学院の構成図
大学院の構成図
博士前期課程(修士)

健康看護学領域

健康看護学領域では、地域で生活するあらゆる健康レベルの人々またはその家族に対する総合的ヘルスケアをデザインするための高度な理論・方法・実践能力をもった人材を養成する。健康看護学領域は、「看護デザイン分野」「地域・精神・保健学分野」および「看護管理学分野」の3つの研究教育分野から構成される。

■ 看護デザイン分野

人間のケアを目的にする看護学固有の理念のもとに、看護学の新しい領域として看護デザインを位置づけた。看護学の構成要素として考えられる人間と環境相互のよりよいありかたを探求し、新しい看護を構築していくためのデザインに関連する内容を取り扱う。
具体的には、地域社会で療養生活を営んでいるさまざまな対象とそこに関わる看護者に対して、生命力を高め生活を支援するための道具や設備、療養環境、ケアの方法から有効性の検証まで、学際的なアプローチができるよう基礎となる理論と方法論を学び、対象にとってより有効性の高い看護をデザインするための研究能力の修得をめざしている。

■ 地域・精神・保健学分野

この分野は、一定の行政区域からなる地域住民を対象に健康生活の側面から捉える地域看護、障害者に対するノーマライゼーションも含めた豊かな社会構築を追求する地域・精神・保健看護を包含しており、各々について特論・演習・実習科目を設定している。したがって教授内容は、あらゆる健康レベルと地域社会の場に応じた援助方法、知的障害者または精神障害者本人・家族への支援方法、および地域ケア支援体制づくりに関する看護援助提供方法等である。
また、本分野は地域看護の専門看護師教育課程基準に対応した科目も開講する。

■ 看護管理学分野

多様なヘルスケアニーズを持つ個人、家族および地域住民に対して、質の高い組織的看護サービスを提供するには、優れた資質を持ち、創造的に組織を発展させることができる能力を有する看護管理者が求められる。保健・医療・福祉の変化に応じて看護サービスの質を保証するためのヘルスケアシステムを改革・創造できる高度な看護実践者の育成を目指す。また、職位に関わらずリーダーシップスキル、マネジメントスキルを発揮して、看護組織の掲げる様々なレベルの目標を達成できる人材の育成を目指す。
なお、本分野では、実務経験に応じて認定看護管理者の認定審査の受験資格に対応した科目を開講する。

実践看護学領域

実践看護学領域では、各ライフサイクル期にある対象の特性や健康問題の理解を基盤とし、これらの対象に対する看護援助の理論・方法に関するより高度な研究能力と実践能力を持つ人材を養成する。実践看護学領域は、「女性看護学分野」「子どもと家族の看護学分野」「成人看護学分野」「老年看護学分野」「在宅看護学分野」の5つの研究教育分野から構成される。

■ 女性看護学分野

性と生殖に関する健康と権利をベースに、女性の生涯の健康と看護を生涯発達、女性のライフサイクルおよび家族のライフサイクルの視点から考えていく。対象理解において女性だけでなく男性も当然のごとく視野に入れる必要がある。思春期、周産期、母児関係、子育て、感染症、婦人科疾患、DV、不妊、独身女性、更年期から老年期等々にある人々に対する既存の専門的知識を習得し援助活動を修得する。さらに対象者と家族が有する多様なニーズ、課題に創造的で先駆的な取り組みができる実践・研究能力を養い高める。

■ 子どもと家族の看護学分野

子どもと家族の発達や健康生活、養育環境の重要性等、子どもと家族の状態を総合的に理解し援助するために重要となる知識や理論を学ぶ。また、育児不安や子どもの虐待等、現代社会における子どもと家族をとりまく諸問題を取り上げ、その実態や背景、保健・医療・福祉等の広い分野にわたる予防や援助、他職種間の連携について学ぶとともに、当事者の視点で問題を捉え、親子への対応や関わり、ケアを探求する素地を養う。
また、本分野は小児看護の専門看護師教育課程基準に対応した科目を開講する。

■ 成人看護学分野

がんや危機的な状況にある人、および慢性的な疾患を持った患者とその家族を対象にした看護を扱う。対象理解に必要な病態生理に関する専門的知識、看護理論を修得し、看護実践における活用法を学ぶ。また、看護実践における他職種との連携、倫理的課題の解決法について修得する。さらに、治療を受ける患者のみならず、治療後の患者や治療効果が期待できなくなった患者や家族への継続ケア、および緩和ケアにも焦点をあてる。
また、本分野はがん看護の専門看護師教育課程基準に対応した科目も開講する。

■ 老年看護学分野

歴史的・社会的存在としての高齢者への理解を深め、老化過程や生活の営みに関連する健康問題に対して、高度な専門的知識と判断に基づく支援活動を修得する。また、高齢者のセルフケア能力の開発に貢献するケア方法を探究する。さらに、高齢者と家族のQOL向上のために施設内・外における保健・医療・福祉領域での密接な調整、相談機能を高め、高齢者と家族が有する多様なニーズ、課題に創造的・先駆的な取り組みができる実践・研究能力を修得する。
また、本分野は老人看護の専門看護師教育課程基準に対応した科目も開講する。

■ 在宅看護学分野

生活の場で療養をしている新生児から高齢者を対象に、生活の質(QOL)を高め、その人が望む生活を維持できるように本人、家族に対し、看護を提供するための知識と理論を学ぶ。
また、在宅ケアシステムやケアマネジメント、保健・医療・福祉に関連する職種との連携・協働のあり方、在宅における継続看護について学ぶ。それらの学びをふまえ、在宅看護・在宅ケアの質の向上を図るための看護研究能力を育成することを目指す。

助産看護学領域

■ 助産看護学分野

助産看護学領域では、マタニティサイクルにある対象や女性のライフサイクル全般にわたる特性及び健康問題の理解を基盤とし、最新の医療ケアに応じた科学的な根拠に基づく確実で安全な助産実践と性と生殖に関わる相談・教育・支援方法について学ぶ。それらと平行して、助産管理や助産教育研究について精通し、高い倫理観と社会的使命感を持ちながら、生涯にわたり助産実践や助産学の発展に貢献できる専門職業人を養成することを目指す。

博士後期課程(博士)
博士後期課程は、1看護学領域2分野で構成されている。

コミュニティケア・看護デザイン科学分野

この分野では、あらゆるレベルの人々に対する、生活者としてのトータリティーを重視したケアをデザインし発展させる看護科学者の育成を目指す。その内容として、対象の生命力を高め生活を支援するための療養環境や生活道具・設備のデザイン、看護プログラムのデザイン、看護提供環境の設計・管理のデザイン、ゼロ次予防から3次予防にいたる保健・医療・福祉システムの社会的デザイン、それを裏付ける看護理論のデザインなどが含まれる。このような目的を効果的かつ科学的に進めるために、人文・社会・自然諸科学との学際的なアプローチを看護学の一層の専門性と統合し、看護にかかわる現象の本質や看護実践のもととなる原理を解明することを重視する。

実践看護科学分野

この分野は、高度な研究能力と実践力を有する人材育成を目指す前期課程「実践看護学」領域を発展させ、対象の特性および居住する場の特性などに対応した専門的看護実践を裏付ける看護学を構築できる看護科学者の育成を目指す。そのために、保健・医療・福祉にまたがる複雑な健康課題・社会的課題に対して、対象及び家族の各ライフスタイル、在宅から施設に至る居住の場に応じた看護プログラムの開発やその検証をするなど、科学的に看護学を探求する。

専門看護師(CNS)教育課程

専門看護師教育課程について

本学大学院博士前期課程の「地域・精神・保健学分野」「子どもと家族の看護学分野」「成人看護学分野」「老年看護学分野」には専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)教育課程に対応したコースが併設されており、それぞれ「地域看護」「小児看護」「がん看護」「老人看護」の専門看護師教育課程として日本看護系大学協会から認定されています。

専門看護師とは?

複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族および集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識および技術を深め、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかる看護師で、日本看護協会専門看護師認定審査に合格し、「特定の看護分野において卓越した看護実践能力を有する者」として認められた者です。
分野には、がん看護、慢性疾患看護、母性看護、小児看護、老人看護、精神看護、家族支援、地域看護、急性・重症患者看護、感染症看護、在宅看護の11分野(2016年3月現在)があります。

専門看護師の役割

専門看護分野において、以下の役割を果たすことが期待されています。

    1. 実践:個人、家族および集団に対して卓越した看護を実践する。
    2. 相談:看護職を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う。
    3. 調整:必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う。
    4. 倫理調整:個人、家族、集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる。
    5. 教育:看護職に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす。
    6. 研究:専門知識および技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究活動を行う。

専門看護師教育課程

本学の専門看護師コースでは、共通科目(A/B)と各専門看護分野の専門科目から38単位以上の履修が必要です。共通科目Aから必須科目10単位と選択科目4単位以上、共通科目Bから6単位履修する必要があります。その他、専門科目は各専門看護分野で指定された科目を24単位以上(地域・精神・保健学は25単位以上)の修得が必要です。(実習科目は10単位以上必要)。これらは専門看護師が備えるべき実践能力を身につけるために必要な単位数とされています。

所定の課程を修了した看護師、保健師、助産師のいずれかの免許所有者は、実務研修を積むことで(通算5年以上必要で、そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修)、専門看護師認定審査を受けることができます。合格し認定された後は5年ごとに更新審査が必要です。

認定看護管理者

認定看護管理者とは?

多様なヘルスケアニーズを持つ個人・家族・地域住民に対して、質の高い組織的看護サービスを提供することを目指し、看護管理者の資質と看護の水準の維持および向上に寄与することにより、保健・医療・福祉に貢献できる人材です。

受験資格について

保健師、助産師、看護師のいずれかの実務経験が通算5年以上あり、本学博士前期課程「看護管理学分野」を専攻し、修士号を取得しているもので、臨床における看護管理経験が3年以上ある者が、日本看護協会の「認定看護管理者」認定審査を受けることができます。

助産師養成課程

1.本学の助産師養成課程(助産実践コース)について(2018年4月から開設)

高度な専門知識・技術を有する助産実践能力および助産学を発展させる能力を養い、助産師免許取得を目指すコースです。専門化・複雑化する助産を取り巻く状況の中で、多職種と連携・協働し、質の高い助産ケアを提供する役割が果たせるように、助産学の知識と技術を体系的に学びます。

2.めざしている助産師像

少子高齢化が進む中、産科医師の不足や産科診療の縮小化など、産科医療を取り巻く情勢は深刻であり、女性が安心して妊娠・出産・子育てできる環境が求められています。正常産を扱える助産師の役割期待は大きく、医療施設、行政、地域住民が連携し、妊娠から子育てまで切れ目なく支援できるしくみが必要となっています。また、若年妊娠、高齢出産、慢性疾患の合併妊娠、不妊、虐待や暴力、性のあり方など、女性を取り巻く状況は複雑化・多様化しています。
本課程では、母子とその家族が安心できる確かな助産実践能力、多職種と積極的に連携・協働し継続的に援助を推進できる能力、女性のライフサイクル全般における性と生殖に関わる健康課題を探究できる能力、助産ケアの質の向上や助産学の発展に貢献できる研究遂行能力、そして、温かく豊かな人間性と専門職業人としての倫理観やアイデンティティーを培うことのできる助産師の育成をめざしています。

3.カリキュラム

共通科目と専門科目(女性看護学分野・子どもと家族の看護学分野等)を30単位以上、および、以下に掲げる助産師国家試験受験資格取得に必要な科目32単位を履修します。

科目 概要
助産学概論 助産の概念と変遷、助産師の職業倫理、ならびに国内外の母子保健の実情を知り、助産師における責務と役割について学修する。
健康教育演習 性と生殖に関する健康の知識および相談・教育・支援に理論、原理を活用し、個人および集団への健康教育、支援の技法を修得する。
助産診断・技術特論演習Ⅰ
(概論・妊娠期)
助産診断の意義、対象の理解に必要な概念を学び、妊娠期における診断・アセスメント・助産ケア立案・助産技術を修得する。
助産診断・技術特論演習Ⅱ
(分娩期)
分娩期における診断・アセスメント・助産ケア立案・分娩介助にかかわる基本的な助産技術を修得する。
助産診断・技術特論演習Ⅲ
(産褥期・新生児期・乳幼児期)
産褥・新生児期・乳幼児期における診断・アセスメント・助産ケア立案・助産技術を修得する。
助産診断・技術特論演習Ⅳ
(ハイリスク)
ハイリスク妊産褥婦および児の病態生理と治療法を理解し、助産ケアの必要性とチーム医療における助産師の役割を学修し、異常徴候の早期発見とアセスメント・ケア計画・ケア方法を修得する。
助産管理特論 周産期医療の質と安全の視点から日本および海外の周産期医療システムと助産師の役割について理解する。
地域母子保健特論 日本および海外における母子保健の現状を理解し、訪問指導など地域母子保健活動の実際について理解する。
助産実践実習Ⅰ-1
(正常・継続)
妊娠期から分娩期、産褥・新生児期まで継続して母子を受け持ち、母子の健康診査と保健相談、家族を含めた健康教育を行う。
助産実践実習Ⅰ-2
(正常)
正常な経過にある母子とその家族に対して、持てる知識や技能を最大限活用し、主体的に助産実践できる能力を養う。
助産実践実習Ⅱ
(ハイリスク・継続)
ハイリスク妊産褥婦および児のケアの実際を学修しながら、ハイリスク妊婦1例を受け持ち、妊娠中から産褥期、可能であれば家庭訪問指導までを通して継続的な援助について理解する。
助産管理実習 周産期医療施設(病院と助産院)における助産業務および管理システム、緊急時・災害時の対応・連携について理解する。
  • 演習科目では、アクティブラーニングの推進に効果的な学修として※PBLやシミュレーション教育を取り入れています。
  • 健康教育演習では、石川県で開業している助産師の熟練した技と職業観に触れ、学びを深めます。
  • 実習施設は、石川県立中央病院、恵寿総合病院、めぐみクリニック、あわの産婦人科医院、どんぐり助産院等です。

※PBL:Problem-based learning(問題基盤型学習、問題発見解決型学習など)またはProject-based learning(プロジェクト型学習)の略